思い立ったが吉日、とにかく即行動!という人もいるでしょうし、行動力も大切なのですが、転職やキャリアプランは今後の生活や人生に大きな影響を与える重要なものです。転職を考えるために準備は必要です。一度立ち止まって自分の考えを整理したり、日ごろから心がけて、方向性や目的意識を軌道修正することはとても大切です。これが”もう、すでにできているよ!”という人は読み飛ばしてもらって構いませんが、その点に少し自信がない人は転職の準備としてちょっと考えてみてください。
ポイントは2つです。
1)この先、自分がどうなりたいか、どうなっていたいのかを考えてみる
私がおすすめするのは3年後、5年後、10年後のイメージをできるだけ具体的に考えてみることです。これは仕事のキャリアの話だけではなく、自分のライフ・スタイル、期待する収入や家族のことも含めてです。働き方はどんどん多様化していく時代です。結婚しても男性が主に家計を支えるという常識はなくなりつつありますし、得意なほうが分担すればよい。また、これからはもっと趣味に時間を使いたいとか、家族との時間が最優先と考えて仕事は固定収入の手段として割り切りたいと思う人もいるでしょう。そういう将来について、短期的な視点だけではなく、少し先のことも考えてみてください。
ただ、忘れてはいけないのは、どんな将来を描いたとしても、生活していくために仕事や収入が必要だということ。
ですから、キャリアプランや転職は何も出世や高い収入を目指す人のためだけのものではありません。
進む先が決まれば、どうやってその目標に向かっていくかについて考えをめぐらすことができるようになります。高いキャリアを目指す人は純粋に仕事の目標を高く設定して、希望のポジションと今いる自分のポジションのギャップを見定めて、そのギャップを埋める努力をすれば良いですし、仕事は仕事と割り切りたい人は、一度身に着けてしまうと、定常的に価値が発生するキャリア(例えは、資格とか、ニッチな職業とか、なるべく置き換えが簡単に効かないスキル)を作ることが重要になるかもしれません。この3/5/10年目標に沿って、まずは大まかでもいいので、自分の価値観、目標を具体的に認識してみてください。また、この3/5/10年目標は事あるごとに見直すことも忘れないように。当然、自分を取り巻く環境や、自分の成長にともなって、考えて方は変わって当然ですから。
2)自分の価値を分析してみよう
転職やキャリアプランを考える際に大切なことは、”自分について知ること” です。言い換えれば、自分が今、人材市場でどの程度の価値があるかを見極めることです。転職によって収入を今の2倍に上げたいと思っても、それはかなり難しい話です。また、人気の職種や企業に転職するのも簡単ではありません。その実現可否は、自分にその価値が備わっているかどうかで決まります。ですから、まずは自分に立ち位置を知ることで、どうすればその実現可能性が高くなるかが見えてきます。また、自分をどのように見せるのが自分の価値を一番高く見せられるかにもつながっていきます。
転職市場では自分自身が商品です。
その商品を誰かに高く買って欲しいわけです。よほど目利きの買い手が、宝石の原石であるあなたをみけて買ってくれれば良いのですが、そんな話は稀です。ですから、自分をうまく買い手に見せる必要があるわけです。ただ、誤解しないでください。見栄を張ったり、うそを付いて良いという話をしているのではありません。あくまで、自分が本当に持っているスキルを相手に魅力的に伝える努力をしなくてはいけないという話です。
例えば、あなたが車を買い替えるとします。当然、今乗っている車を高く下取ってもらいたいですよね。ただ、ぱっと見、傷があったり、走行距離が少し伸びていたり、車体の色が人気色じゃないとか、いろいろと気になるところがあります。買い手の人も突っ込んでくるでしょうし、高値での売却をあきらめる気持ちが出てきます。しかし、メンテナンスを欠かさずやっていたおかげで、エンジンや機関は絶好調、むしろ新車時のあたりが取れて、スムースにすら感じることや、新車初期に出ていた固有の不具合はすべて直してあるので、今後の不具合の心配はないとしたらどうでしょう。外観を重視する人には向きませんが、機関を重視する人にとってはお買い得物件で、”まさにこんなの探してた!”となるでしょう。
何が言いたいかというと、自分の価値を見出してくれそうなところに向かって自分を売り出していく必要があるということです。人材を欲している企業の需要はまちまちです。もちろん100点満点の候補者がいれば、だれもが欲しいとなるでしょうが、そんな人材は稀です。ですから、自分を深く知ることで、自分の売りになる部分、足りていない部分が明確になって、どういう方向で自分の価値を売り込めばよいかわかってくると思います。
具体的には私がいつもやる方法をお教えします。
①自分の得意なところ、良いと思うところを10個上げる。(専門や業界固有の話だけでなく、自分のワークスタイル、パーソナリティも)
②改善が必要だと思うところを5個上げる。
やってみると分かりますが、ダメなところを上げるほうが圧倒的に楽だと思います。別の機会に述べますが、これは日本人の問題点でもあると思います。特に最初の頃は得意なところ、良いと思うところ10個見つけるのはかなり大変なはずです。それでもめげずに10個です。見つけてみてください。
いいところが10個見つかったら、その項目それぞれをサポートするエピソードを2つづつ付けてください。あなたが”ここは良いところ”と思った理由があるはずなので、その理由を簡単なストーリーにすればいいです。次にもう少し深く突っ込んでいきます。次はなぜあなた以外の同業や身の回りの人はあなたと同じようにできなかった、もしくはできなかっただろうと考えたか、あなたとあなた以外の人の差を考えてみてください。ここは100%想像でかまいません。
例えば、私はグループを取りまとめるのが得意だと、言ったとします。なぜ私が取りまとめるのが得意なのかといえば、私は大枠をとらえるのが得意なので、個々の仕事が、大きなプロジェクトのなかでどのような位置にあって、何が期待されているかを考えて、個々の仕事をグループの担当者に振り分けています。といった感じのことを見つけみてください。
こういうことを積み重ねていくと、自分の強みが少しづつ明らかになっていきます。また、反対に得意だと思っていたことが、深く突っ込んでいくと、ほかの人のほうがうまくできているという事に気が付くこともあるかもしれません。
次はダメなところ、5個についてです。ダメなところは、もうこれ以上深く掘り返しません。やるべきことは、”ものは言いよう”的な解釈で欠点が長所に転化できないかを考えます。例えば、さっきの例の ”とりまとめが得意” の例で考えましょう。大枠をとらえることが得意とすると、細かい部分に配慮が行き届かないところが、欠点になりえます。ただ、この場合は、細かい部分に目が行き届かないことは、グループのリーダーとしてのポジションがより自分に向いている説得材料に代わります。当然のことながら、リーダーは全業務の微に入り細に入り理解することはできませんから、リーダーとしての資質としては、この点は妥協できるものになり、よりあなたがリーダー向きだと認識を深める材料となるでしょう。
ただ、こんなにうまくすべてがつながりませんから、本当の欠点は最後まで残るはずです。もしこの欠点が、今後あなたが目指すキャリアにおいて大きな障害になるようであれば、この部分をこれから時間をかけて集中的に改善していくことが目標になりますし、ここが改善されれば、あなたの人材市場での価値も向上することになります。
ここまでできて、ようやく転職活動、キャリアプランへの第一歩が踏み出せます。
すでに”そんな大そうに売り込むスキルなんてないし。。。”っていきなり悩んでいる人いませんか?それはあなたが判断することではありません。あなた自身がその価値に気が付いていないことのほうが多いのです。今まで自分の立ち位置を客観的に眺めたことがない人はなおさらです。また、一つの会社に長く勤めている人、主婦の方でいったん一線を退いてしまった人、こんな方たちも価値あるスキルが気づかれずに眠っていることも大いにあり得るのです。少しでも、自分のキャリアと向き合ってみようという気持ちがあれば、ぜひ考えてみてください。